2026年2月24日

労働組合などの支え合い・助け合い活動を広げるために、連合は2019年に「ゆにふぁん」を立ち上げた。「ゆにふぁん」には、ファンディング(お金)を循環させ、活動のファン(楽しさ)を伝え、労働組合へのファンを増やしたいという思いが込められている。取り組みの現状と今後について、連合総合運動推進局の春田雄一総合局長に話を聞いた。
労働組合の支え合い・助け合いは知られていない
――連合の「ゆにふぁん」について教えてください。
- 春田
-
労働組合はこれまで、カンパや物品寄付、災害時のボランティアなどの取り組みを行ってきました。労働団体や福祉団体、NPOなどと連携して、社会課題に取り組んでいる労働組合もあります。しかし、こうした取り組みは、社会はもとより組合員にもあまり知られていません。
一方で、支え合いや助け合いの活動を大切だと思い、参加したいと考えている人はいます。連合が行った社会運動に関する調査やヒアリング でも、若い世代はとくに社会課題への意識が高く、それを解決する取り組みを重視することがわかっています。
また、労働組合がハブになることで、支え合いや助け合いの活動を広げていくこともできるはずです。そこで、2019年10月にWeb上に「ゆにふぁん 」を立ち上げました。
- 春田
-
「ゆにふぁん」には、産別労組や単組、地方組織(地方連合や地域協議会)が取り組んだり、関わったりしている、支え合い・助け合いの活動を掲載しています。活動内容は大きく10種類、「働く人を応援」「貧困から守る」「教育・子育てを応援」「障がい・介護を支える」「自然を守る」「フードバンク・子ども食堂」「地域を元気に」「被災地を応援」「動物を守る」「その他」あり、2025年10月時点で981件の取り組みが載っています。

- 春田
-
「ゆにふぁん」には活動紹介の他にもいくつかの機能があり、READYFOR と連携して、クラウドファンディングの実施もサポートしています。「ゆにふぁん」経由のクラウドファンディングには、これまでに、のべ約1600人が参加し、1600万円強が集まりました。
地域活動は労働組合への親近感を高める
――「労働組合が社会貢献活動を行っている」と話すと驚かれることが多いです。
- 春田
-
「連合および労働組合に関するイメージ調査 」では、連合が「災害支援・ボランティア活動、社会貢献活動」に取り組んでいることを知っている人は1割もいませんでした。一方で、こうした取り組みを知っている人たちが、連合を身近だと感じる割合は78%と非常に高いんです。
そのため、労働組合による支え合いや助け合いの活動によって、労働組合への共感が高まり、参加につながればと考えています。とくに今の若い世代へのアプローチとしては重要だと思っています。
もちろん、困っている人や助けを必要とする人たちへの活動は、それに取り組むことが最重要で、誰かにPRするために行うものではありません。それでも、いろいろな地域で話を聞くと、「自分たちの活動をもっと知ってほしい」と思っている組合役員は多く、僕自身が「支援の輪を広げるために、もっと多くの人に関わってほしい」と思う取り組みもあります。
――「ゆにふぁん」がその橋渡しになるといいですね。
- 春田
-
実は、「ゆにふぁん」という名前には3つの思いが込められています。まず、労働組合がファンディング、つまりお金を集めたり、循環させたりして、新しい社会活動を切り拓いていきたい。また、労働組合の地域における活動を見える化してファンを増やしたい。そして、労働組合を介して「つながり」の楽しさを実感する場にしたい。つまり、「ゆにふぁん」は、「ファンド(fund)がファン(fan) をつくって、ファン(fun)、楽しい」と思える活動を広げるための取り組みなんです。
――「ゆにふぁん」を活性化するためにどんなことをしているのですか。
- 春田
-
「ゆにふぁん」をもっと使ってもらうために、2025年にサイトを改修し、情報発信も強化しているところです。
改修前は、日本地図をクリックして都道府県ごとに活動を表示する形態だったのですが、その方式では「最新の取り組みをみつけにくい」という声が出ていました。そこで、2025年8月に、ユーザー・インターフェースをSNSのように、最新の投稿が上位表示されるように変えました。
また、「ゆにふぁん」に掲載された取り組みを、連合のメディア『RENGO ONLINE』や『季刊RENGO 』 、Facebookや Xで紹介することも始めました。地域協議会のなかには自分たちでSNSに情報を掲載しても、あまりみてもらえないところもあるのですが、連合側で情報発信を強化したことで、「ゆにふぁん」に投稿してくれるようになったところもあります。徐々にですが、好循環が回り始めています。
「理解」「共感」は「参加」により深まる
――支え合い・助け合いの輪を広げるには何が必要でしょうか。
- 春田
-
支え合い・助け合いへの「理解」や「共感」を高めたいのは、最終的にそれが「参加」につながるからです。労働組合はさまざまな支援活動を行っていますが、お金やモノの寄付だけでなく、実際に自分たちが出かけて現場を見て手足を動かす活動を重視しているところが結構あります。それは、自分自身が「参加」して、取り組むことによって、「理解」や「共感」が高まるという逆の流れもあるからです。
僕自身の経験でも、目の前に困っている方がいて、助けようとしている時って、気持ちが昂るんです。そういう時の、正義感というのか、モチベーションというのか、その思いは、実際に活動するからこそわかるものです。
――参加者を増やすためにどんな工夫をしていますか。
- 春田
-
「ゆにふぁん」では2年に1度、ゆにふぁんフォーラムを開催して、全国の担当者に集まってもらっています。「ゆにふぁん」の活動は地域ごとが多いので、コロナ禍以降、オンライン会議がほとんどになっています。しかし、リアルに集まって会話することは、やはりとても重要で、2025年8月の第3回フォーラムでは、今までとは違い、新たな試みや工夫を凝らしました。
以前、「若者とともに進める参加型運動 」をまとめる際に若者主体の活動を取材しましたが、普通の会議体とは違って、BGMをかけたり、ラフな椅子に座るといった雰囲気の方が場が盛り上がると感じました。その経験から、今回は企画段階から若いメンバーの意見を聞いて、できるだけ取り入れました。
みんなが楽しく話せるよう、親しみのもてるラフな場にしたいと思い、会場は椅子がカラフルで自由にレイアウトできる表参道の場所を借り、僕自身も堅くならないよう短パンにサングラスっぽいメガネをかけていきました。さらに、参加者同士が所属組織を越えて混ざり合うようにくじ引きでチームをつくって、イベント後の交流会ではノンアルコールだけでなくお酒の缶も選べるようにしました。だって、好きなものを飲みながらの方が、話が進むでしょう。

――ゆにふぁんフォーラムでは、参加者みんなでスポGOMIもしましたね。
- 春田
-
今回、一番工夫したのは、参加者みんなで実際にスポGOMIを実施したことです。スポGOMIは、ごみ拾いにスポーツのエッセンス、つまりポイントや勝ち負けの要素を取り入れた活動で、いまや世界8カ国に広がり、20万人以上が経験しています。スポGOMIの大会に向けて、部活を新設した学校もあるほどです。
当日は、いち早くスポGOMIに着目していた連合京都北部地域協議会の水口一也さんが経験談を話してくれました。連合京都北部地協では清掃活動を35年間続けてきたものの、年を経るごとに参加者が減少し、当初の半分程度しか集まらない状態になっていました。
そこで2022年にスポGOMIを導入して参加を募ったところ、定員30人を大幅に上回る15チーム75人がエントリー。しかも、内40人は20代で、従来の清掃活動では集まらない人たちが手をあげてくれたそうです。しかし、定員オーバーでスポGOMIは開催できず、従来の清掃活動にしたところ参加申込みは激減。同じ清掃活動でも、やり方次第で参加者数が大きく変わるとおっしゃっていました。
こうした話を聞いていたので、日本財団スポGOMI連盟の常務理事である馬見塚健一さんたちに来ていただいて、参加者約60名で11のチームをつくり、原宿で30分間ごみ拾いをしました。いろいろな感想があったのですが、全体的に好評だったと思います。
第1回、第2回のゆにふぁんフォーラムでは、事例共有やパネルディスカッションなど座学だけだったので、実際に参加者に活動を体験してもらうということは初めての試みでした。実際、話を聞くだけよりも、みんなで一緒に活動して、こういうものだと自分で理解して、共感できたほうが、地方連合会や構成組織に持って帰るものがあるはず。組織で展開してもらうには、一度、体験してもらうほうが良いだろうと考えました。みなさんに楽しんでもらえてよかったです。
新たな運動を生み出すには意思決定を変える必要
――ゆにふぁんフォーラムには第1回から参加していますが、第3回は過去最高に充実していました。実施はスムーズでしたか。
- 春田
-
新しい取り組みだったので、非常に大変でした。8月開催のため、熱中症対策や台風への備えなど、組織内では多くの意見がありました。ます。それを説得するのには相当なエネルギーが必要です。
例えば、今回、ファンづくりのひとつとして、参加者に連合のキャラクターである「ユニオニオン」のぬいぐるみ(キーホルダー)を配りました。今の若い人たちはこういうものを2つも3つもぶら下げているし、欲しいという意見ももらっていたからです。参加者が鞄に「ユニオニオン」をつけてくれたら、連合の認知度も広がるきっかけになるかもしれないでしょう。
しかし、これに対してもさまざまな意見がありました。年代による感覚の違いや費用対効果への疑問など、そこをひとつずつ何度も議論を重ね説得していきました。
支え合いや助け合いの活動では、まじめでなければならないという考えから、ラフで楽しくやるようなやり方に賛同しない人もいます。しかし、ファン(fun)、楽しさ、は共感を広げるとても大事な要素です。楽しさを取り入れることへの努力は惜しまないつもりです。
――同じ社会貢献活動でも、まじめさが求められる場面と、遊びの要素があってもよい場面があります。遊びがあったほうが盛り上がることもあります。
- 春田
-
労働組合は物事の動かし方において、リスクに敏感で、細部にこだわり、さらに全員参加の意思決定を重視する傾向にあります。しかし、これは自分たちのなかから新しい運動を起こす局面では相性が悪いことがあります。
「原宿でゆにふぁんフォーラムを開催し、参加者でごみ拾いをしたい」と提案したら、「暑いのに大丈夫なのか?」「緊急時の対応は?」...との心配の声が次々に上がります。もちろん大事なことであり、当然、準備もします。しかし、心配の声だけはなかなか前に進みません。新しいことを形にするには、「これをやったらもっと共感や参加の輪が広がるね」という前向きな声や後押しも欲しいと思うんです。
支え合いや助け合いは、みんなのために、取り組んでいる活動です。新たなチャレンジを実現するためには、議論を前向きにする雰囲気づくりも大切だと感じています。
――何度も否定されると「学習性無力感」に陥ることが知られています。意思決定の仕組みをどう変えるとよいですか。
- 春田
-
労働組合はみんなの意見を平等に尊重します。確かに、それは大事なんですが、それだけだとうまくいかないと感じています。
企業(単組)での経験を元にすれば、例えば、CMをつくるとき、CMの内容については広報宣伝部が責任をもちます。専門家でもない経理の役員や工場長が会議で、思いつきで発言したことを、広報宣伝部と同じレベルで尊重したら、おかしくなるし、いいものはできません。意見をいうことはよいことですが、内容によっては、意思決定の際に軽重をつける必要があります。
支え合い・助け合いは身近な活動で、誰にとっても理解できます。専門性が求められる政策関連の取り組みに比べて、意見もいいやすい。しかも、運動は論理だけでなくて、感覚的なところも求められます。
労働組合では「これをやったらこれにつながる」という説明力や説得力が大切です。ですが、よいものを生み出すには、それらのうえに、発想力やトライ・アンド・エラーを認める度量が必要です。経験の少ない若い人たちを巻き込むためには、なおさらそういう柔軟性が必要だと思います。
運動推進者を孤軍奮闘させないために
――新しい運動を形にするにはバックアップも大切ですね。
- 春田
-
理解者がいてくれないと、運動を進める担当者が浮いてしまいます。構成組織や地方連合会の「ゆにふぁん」の担当者のなかには、熱い想いを持っている人が結構います。連合組織内の青年委員会などで話していても意欲的な人に会います。
ただ、全員が同じ意見かというと、そうではありません。労働組合は多様な意見をもつ人がいるうえに、組合運動では組合員の労働条件向上が最優先なので、社会貢献活動も含めて、そこから外れる活動には一層いろいろな意見や価値観があります。
僕は東日本大震災で連合救援ボランティアとして活動したこともあり、2024年に能登半島大地震が起きた時に、直接の担当でないのですが先遣隊として急遽地入りしてくれと頼まれたんです。ですが周りからは、「今、春田さんに抜けられたら困る」「東日本大震災のボランティアなら他にも経験している人はいる」という声があがって、その緊急性や重要性についてひとつずつ説明して、ようやく現地に行けました。
大規模災害のボランティアでさえこういうことが起こるので、支え合いや助け合いの運動に対する組織風土や意思決定の仕組みを整備する必要があると思っています。
――そういう組織風土や価値観はどうすればつくれますか。
- 春田
-
労働組合には社会課題に向き合って解決していく、かっこよくいえば、社会正義を追求する役割があります。単組、産別、ナショナルセンター、地方組織で、役割は違うし、強みも違います。ナショナルセンターでは単組のような現場感のある活動はできないので、一個人としてはジレンマも感じています。一方で、ナショナルセンターである連合に来たからには、社会全体のことを考えて、その課題に向けて動いていきたい。誰かに押しつけられるのではなく、自分でそういう感覚をもてるのが理想です。
――その感覚を身につけるには何が必要ですか。
- 春田
-
経験してみることが一番です。被災地のボランティアに行けば、目の前に困っている方々がいて、どうにか救いたいと思います。理屈じゃない。連合が構成組織を通して救援ボランティアの募集をかけると、単組からも多数の応募が集まるのは、その意義を感じているからだと思います。
「参加」のきっかけづくりが大切です。とくに今の若い人たちには、以前のように「とにかく参加しろ」は通用しません。「何のためにやるのか」納得してもらうことが求められます。彼ら・彼女らは意味があると感じたらすごく動くけれど、興味がなければ動きません。わかりやすい説明で興味をもってもらうだけでなく、順番は逆になりますが、まず参加してもらって理解してもらうことも重要です。
そのためには、連合や労働組合のなかでのこうした活動の発信など認知や浸透にもっと力を入れる必要があると思っています。労働組合のなかでこんなに良いことをしていると知ってもらうことで、参加につながることを期待しています。
取材日 2025年11月4日
※組織名や役職は取材時点のものです。
聞き手 中村天江、新井康弘
執 筆 中村天江
